森林浴ファシリテーター養成講座ってどんな研修を受けられるの?
【報告レポート】第5回 森林浴ファシリテーター養成講座
今年で5回目となる森林浴ファシリテーター養成講座。4月に事前講習(オンライン)を2日行い、その後、5月16日(金)〜19日(日)に山梨県北杜市清里に集合し、集合研修を実施しました。会場となる清泉寮は標高1400mに位置し、日中は20度を超える陽気でしたが朝晩は10度を下回り、日中との寒暖差を感じる気候でした。研修は本年もキープ協会の皆様に協力をいただいての開催です。
今年の受講生は、福島、山形、新潟、静岡、岐阜、群馬、神奈川、千葉、東京、京都、兵庫、和歌山、愛媛、長崎より24名。林業に携わる方や、行政、大学教員、建築、ウェディング、お花、コーチチング、乗馬、ガイド等々、あらゆる業界の方が集いました。
毎回、受講のお申し込みの後、受講生お一人おひりと面談を行います。受講の動機や、今のスキル、受講後やってみたいことなどについてお話を聞きます。お仕事や暮らしている環境が違うと、森林浴を行う、ということ自体に一人ひとり価値観が異なります。
自分の持っている山を活用したい。日本の森の新しい価値を見出したい。都会の人に自然と触れる機会を提供したい。仕事の一環で森林浴を取り入れたい。海外の方をご案内したい。企業の研修に導入してみたい。など、動機も目指す方向も皆さん異なります。
Day1
5月16日、前日の夜から強風が吹き朝から緊張が走ります。
小海線が倒木のため運休。清里駅に来るための唯一の電車が、強風による倒木の影響で運休となりました。
早朝から飛行機、新幹線で移動をされている方もおり困っていたところ、車で来られた方が小淵沢で他の受講生をピックアップしてくれて、無事に清泉寮に辿り着くことができました。その後、昼に電車が復旧したため、全員時間通りに無事揃い集合研修をスタートすることができました。
初日のお天気は眩しいほどの晴天!森を歩きはじめる頃、吹き荒れていた風がピタッと止まりました。
爽やかな空気の中、皆さん緊張した面持ちでのスタートです。
森の中に一歩足を踏み入れると、たくさんの鳥がわたしたちを迎えてくれました。集合研修は人数が多いため、4名の講師とスタッフでサポートしながら一つの団体となって森を歩きます。
途中開けた場所で、五感の様子を観察します。
目を瞑り、五感に意識を向けたとき、緊張感や不安感がふっと抜け、いまここにある感覚に意識が向きます。どんな香りがするか、どんな音がどこから聞こえるか、肌に触れる風の心地はどんな様子か。皆さんの感覚センサーが動き出します。
わたしたちは普段、いかに視覚に頼っているのか。また、いかに近いものをじっと見ているのか。
光の存在、香りの世界、身体の機能を思い出すため、さまざまなワークを取り入れながら、森林浴を楽しみました。
森林浴は、森の中でリラックスできる時間と空間。
森の中で安心して横になった時の心地は、ベッドで寝ている心地とはまた違った感覚を覚えます。大地の感触、風のそよめき、心地よい香りと光、この瞬間、日頃一生懸命に活動している自分の身体に意識が向きます。呼吸の深さや身体の緊張、本来あるべき自分の姿が見えてきます。
日向ぼっこのように、森の中で心地よい時間を過ごす「森ぼっこ」。最高の時間を過ごすための環境の選び方や注意点など、実体験を通じて学んでいきます。
はじめて入る森の心地は、はじめての記憶がとても大切です。森林浴の後は、記憶が鮮明なうちに書き留めその感覚を共有しました。
Day2
2日目は、朝の森歩きからのスタートです。朝の光、空気、森の音、日中とはまた違った森の心地を楽しむことができます。
この日は、キープ協会で普段から子どもたちをはじめ、多くの方を森へ案内している小野明子さんから安全管理の知識を学んだ後、森林浴に適した森の選び方について学びグループでのワークを行いました。
森林浴ファシリテーター養成講座では、森をガイドする方法ではなく、森林浴に適した森を選び、その森をアセスメント(評価)するスキルを身につけていきます。一人では気がつくことができない視点も、仲間と一緒に森を歩くと、多くの気づきを得ることができます。
その森は本当に安全か、森林浴に適しているのか。グループごとにまとめて、全体に共有していきます。
森林浴ファシリテーターの役割として、重要な視点が地域との関わりを考えることです。その森で森林浴の取り組みを行うことによって、森に、地域にどのような影響があるのか。森にとっても、地域にとっても、参加されるお客様、そして自分たちにとっても有益な活動となるよう繋がりを考えていくことが重要です。地域との関わりについては、山梨県小菅村で活動をしている石坂真悟さんより、現場での事例をもとに地域との関わりを学びました。
あっという間に2日間が終了し、受講生同士も関係性が深まっていきます。最後の夜は、暖炉に火を入れそれぞれの想いや展望について語り合う時間を過ごしました。
Day3
森林浴を学びにくる人たちは、森へ行くことが好きな人がほとんどです。しかし、世の中にはそれほど森へ行くことが好きではない人や、関心の薄い人もいます。調査データから国民のニーズを知り、森に近い山村に暮らす人、森から離れた都市に暮らす人の価値感の違いについて、自分たちの経験を踏まえて学びを深めていきました。
集合研修の最後の締めくくりは、グループごとに森林浴の企画をつくり、魅力的なプレゼンを行っていただきます。受講生の皆さんのニーズを踏まえ、あらかじめこちらで5つの事例を用意し、訪れるお客様に対してこれまで学んだ知識を活かして企画を練っていきます。
近年、インバウンド需要も増えていることもあり、今年は海外のお客様を対象とした事例をはじめ、地域、親子、企業、リトリートなどさまざまな対象の事例を用意しました。限られた時間の中でのグループワークは緊張感があり、皆さんの目から気迫が感じれられます。それぞれに持つ専門性や感性をふんだんに活かし意見をまとめていきます。
最後のグループ発表は、各班それぞれ大変魅力的な企画を練っていただき、またプレゼンもアイディアを振り絞ってとても素晴らしい発表でした!
今年は人数が多く、準備の時間が例年と比べ短かったのですが、そんなことを思わせないプレゼンテーションは、皆さんそれぞれに持っているスキルの集結であったことが感じれられました。
2日間の事前講習(オンライン)、3日間の集合研修を終えた受講生の皆さんは、これから11月末までの6ヶ月間の実践ワークに入ります。これまでの学びを活かし、自分が森林浴を行いたいフィールドを探し、実際にその森で自分が開催したい森林浴の体験会を企画していきます。
今後、ガイドとして活動をされない方でも、自らフィールドへ出てその森を活用する視点を持って森林浴を企画することで、あらゆるつながりが見えてきます。実践ワークを経て、森林浴ファシリテーターとして一緒に活動ができる日を楽しみにしています。
5期生の皆さん、実践ワークも頑張りましょう!
最後に森林浴ファシリテーター養成講座の講師としてテキスト作成からご一緒いただきました、石坂真悟さん、小野明子さん、今年もありがとうございました。
スタッフとして同行いただいた、牧さん、中島さん、そして清泉寮、キープ協会の皆様に心より御礼申し上げます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回の養成講座は、2025年5月の開催を予定しています。
森と未来 小野なぎさ