わたしたちはどこで生きる生き物なのか。
わたしたちはどこで生きる生き物なのか
ある日、20代の若い方を森にご案内した時のこと。
前日歩いた下見の時、オレンジ色に輝き、
たわわに実る木苺(もみじいちご)を見つけた。
これは明日みんなに食べさせてあげよう!
食べたい気持ちを堪えて
動物に捕られないよう木々の陰に隠した。
当日、じゃーん!とばかりに参加者に見せ
採って差し出した。
どうぞ召し上がれ
「えっ…そのまま? せめて洗ってほしい」
言葉が出なかった。
外にあるものは汚いもの
何がついてるかわからない。
ということのようだ。
綺麗だから大丈夫だよ! とも言えない。
虫が付いている可能性もある。
それは安全だからが故のことだけど
彼らには伝わらないだろう。
綺麗とは一体なんなのだろう
また別の森歩きの時
枝を見つけて土を掘って、土の匂いを嗅いだ。
「土を触るなら先に言って欲しかった」
後の感想でこんな意見があった。
わたしは何が困ったのかがわからず、
どんな準備が欲しかったのかを尋ねると
“手が汚れるから拭きたかった”
とのことだった。
何が綺麗で、何が汚くて、
を明かにしたいわけではない。
私たちはこの自然界の中で
どんな存在なのかをもう一度考えたい。
人間はめちゃくちゃ綺麗な生き物なのか?
自然界の中の何よりも無菌で、害がなく、美しい生き物なのか。
もちろん衛生は大切。
だけど、私たちも動物や植物と同じように
自然界で生きる一つの生き物であることには違いがない。
わたしたちの身体
土から育った作物を食べ
自然界で育った動物を食べ
海や川で泳ぐ魚を食べ
空から届き森を巡った水を飲み
人間の身体がここにある。
人間の体は約30兆個の細胞で形成されており
その体内には40~100兆個に及ぶ常在菌がいる。
人間の健康は菌が保ってくれているようなものだ。
無菌、除菌、殺菌、滅菌、抗菌
世の中で清潔なイメージをもたらす言葉
菌をやっつけろ!
菌が敵のように見える。
こんな情報を浴び、土のない世界で生きていると
この世界が清潔で綺麗な世界
としか思えないのかもしれない。
彼らが悪いわけではなくて、
子供の頃から全く自然の中で過ごしたことがない彼らは
それが当たり前として育つことしかできないのだ。
自然が大切、自然と共生しよう
言葉で言うのは簡単。
だけど、忘れてはいけないのは
私たちも自然の一部であると言うこと。
私たちも自然だと言うこと。
地球のためにたくさんの取り組みがなされているけど
私たちが次の世代に伝えるべき大切なことが
届いていないのかもしれない。
日々の活動をする中で、そんなことを感じている。
わたしたちはどこで生きる生き物なのか?
一緒に考えていきたい。