森と未来 設立10周年イベントレポート-2025.10.29
2025年10月15日、森と未来は設立から10年を迎えました。
創業当初は、森林の空間利用という価値が世の中にあまり認知されておらず、手探りの中で「森の新しい価値を事業にしたい」という思いだけを胸に、活動をスタートしました。10年と聞くと短く感じられるかもしれませんが、わたしたちとってはとても長く、濃く、深い時間でした。嬉しいことも、悔しいことも、たくさんの出会いも、すべてが今の森と未来をつくってくれた大切な軌跡です。
この10年で得た学びや経験、そして今の想いを、これまで森と未来を支えてくださった皆さまと分かち合いたい。そして、これからの100年先の未来に向けて、「森と共にある生き方」を一緒に描いていきたい。そんな願いから、2025年10月29日、東京・神田明神ホールにて、森と未来10周年記念イベントを開催しました。
森と未来 設立10周年記念イベント 〜森と共に生きるこれからの100年〜

森と未来の10周年を祝う場は、日本の心を感じられる場所で開きたい。そんな思いから、1300年の歴史を持つ神田神社の敷地にある「神田明神ホール」で開催することにしました。当日は130名の方々が足を運んでくださり、これまでの歩みを振り返りながら、国内外から駆けつけてくださったゲストからのスピーチを聞き、「これからの森と未来」についてお話ししました。皆さまと共に過ごしたこのひとときは、次の100年へ向けて、森と共に歩んでいく大きな力となりました。

森と未来のこれまで
森と未来は、山村地域の森林を活用し、都市と山村をつなぐことを大切に活動してきました。これまで訪れた地域は地図の緑色の部分で、森へご案内した人数は3,000名を超えます。
しかし、この10年は順調なことばかりではありませんでした。Covid-19の影響で地方へ行けず、人を集めることもできない。森林は本来「三密を避けられる場所」であるにも関わらず、車を持たない都市の人にとって、森に行くこと自体が難しいという現実を改めて痛感しました。
そして会社の存続が危うくなったとき、未来の研修チケットを購入して支えてくださった企業の皆さまに、本当に救っていただきました。このご恩は一生忘れません。人と人との「信頼」の重さを、あの瞬間ほど強く感じたことはありません。コロナ禍は活動に大きな影響を与えましたが、その中から新しい取り組みも生まれました。
2020年、多くの仕事が止まり、立ち止まって考える時間をいただいたことで、Shinrin-yoku Facilitator 養成講座をつくることができました。また、人を集めにくい状況の中、全国の森で活動する仲間とのつながりから GotoForest! の取り組みも始まりました。
“自分は、何を大切にして生きていきたいのか”
多くの方が、立ち止まって自分に問いかけた時間だったように思います。
「自然と触れ合いたい」「森について学んでみたい」「大切な人を森に連れて行きたい」という声が増え、実際に行動へ移す人もたくさんいました。
Shinrin-yoku Facilitator養成講座に申し込んでくださる方は、それまで森とは縁のなかった方も多くいました。6年が経った今では、森林浴を仕事にしている方、仕事の中に森林浴を取り入れている方、国内外のゲストを森へ案内している方など、それぞれの人生の中で“森との接点”が育っています。この広がりこそが、この10年の大きな成果だと感じています。
また、2023年からスタートした海外向けの取り組みを通して、あらためて「日本人が何を大切にしてきたのか」「森がわたしたちにとってどんな存在なのか」を気づかせてもらいました。日々の暮らしの中に自然が息づいていること。当たり前だと思っていた日本の文化や習慣が、実はとても豊かで、森との深いつながりの上に成り立っていることを、海外の方々との対話を通して学ばせていただきました。(今年8月にバンクーバーで想いを伝えてまいりました!)
イベントでは、山村地域で都市からの受け入れを長年行っている、NPO法人多摩源流こすげ 事務局長の石坂真悟さん、企業の皆様へ森と未来の研修を一緒に提供してくださっている株式会社ジェイフィール コンサルタントの佐藤将さんが、素敵なコメントをくださいました。ありがとうございます!
この10年は、山村地域の皆さん、企業の皆さん、森林関係者、行政や自治体の方々と、森について語り合いながら、いまの時代に何が価値になるのかを一緒に問い続けた時間でした。
ゲストトーク
森と未来の10周年を祝うために、スペシャルゲストの皆さまが駆けつけてくださり、ご講演をしていただきました!
🌿 Florence Williams さん
2017年に世界的ベストセラーとなった『NATURE FIX』の著者であり、日本ではNHK出版から発売された邦訳版も多くの読者に愛されているフローレンス・ウィリアムズさん。アメリカから来日して、人と森の関係がどれほど人間に良い影響をもたらすのか、さまざまな研究や事例を交えてお話しくださいました。
また、イベント前日には、彼女が特に関心を寄せている「日本人の自然観」や「日本の森林浴」を知っていただくため、森林浴発祥の地・赤沢自然休養林で一緒に森林浴をしました。海外の視点から見た“日本人と森のつながり”がどのように映ったのか、彼女の次回作が今からとても楽しみです。
🌿 安宅 和人 さん
慶應義塾大学で未来を担う学生と向き合い、あらゆるデータからこれからの世界を読み解く安宅和人さん。2025年7月には『風の谷という希望』を出版され、いま全国で最も注目されるお一人と言っても過言ではありません。そんな中、お忙しい時間を割いて駆けつけてくださったことに、心から感謝しております。
安宅さんとは2019年から“風の谷”の活動をご一緒してきたご縁があり、今回は『風の谷という希望』の第8章にも書かれている“人間と自然を調和”について、直々にお話しいただきました。
200年後の未来に祈りを込めて——
森と未来も、引き続き森と人との関わりを育て続けてまいります。
森と未来のこれから
お二人の素晴らしいご講演のあと、最後に「森と未来がこれから大切にしていきたいこと」についてお話ししました。これまでの10年で学んできたことが、これからの森と未来のミッションを形づくっています。
● 山村地域に受け継がれてきた知恵:山村地域には、自然の恵みをいただきながら、分かち合い、支え合う「森と共に生きる暮らしの知恵」が今も息づいています。これは、未来を考えるうえで大切なヒントだと感じています。
● 海外から見た日本の特徴:海外の方と関わる中で、日本人の自然観そのものが「日本文化の原点」であるということを改めて実感しました。わたしたちの当たり前の中に、海外から見ると驚くほど豊かな森とのつながりがあります。
● 自然と触れ合う価値:森に触れることで、心が落ち着き、ウェルビーイングが高まります。森の時間の流れに身を置くことで、わたしたちは本来の自分を取り戻すことができます。

森と未来が大切にしている3つの要素と「森と生きる文化の知恵」
森と未来では、社会や経済をより豊かにする鍵は 「森と生きる文化の知恵」 にあると考えています。この知恵は、日本人が森と共に生きてきた歴史の中で育まれてきたものです。わたしたちはそれを「文化・価値観」「ウェルビーイング」「環境」という3つの視点で捉えています。

① 文化・価値観 — Culture & Identity
日本のものづくりや暮らしには、森と向き合い、自然を敬う姿勢が受け継がれています。和紙、畳、漆、木造建築など、森の恵みを生かした文化は日本人のアイデンティティそのものです。「もったいない」の精神、自然の声を聴きながら素材と向き合う姿勢は、日本の強みであり、世界に誇れる価値です。
②ウェルビーイング — Well-being
忙しさや不安が増える現代社会。一方で森は、数十年、数百年という長い時間をかけて育ち、多様な命が循環し続けています。森のゆっくりとした時間軸や大きな循環に触れることで、人は心が整い、他人への思いやりや長期的な視点を取り戻すことができます。森は、Well-beingを支える大切な存在です。
③環境 — Sustainability
森は水、空気、木材だけでなく、心地よい空間や安らぎも与えてくれます。これらの価値をきちんと見える形にし、経済の仕組みに組み込むことで、未来の森林を守る力になります。豊かな森を次世代に残すためには、環境の価値を正しく評価することが欠かせません。
⭐︎ 森と生きる文化の知恵— Wisdom ⭐︎
これら3つの要素を支えているのが、森への感謝、自然への畏敬の念、人とのつながりです。これらは、森と生きてきた日本人が大切にしてきた価値そのものでもあります。森と生きる文化の知恵は、わたしたちの心を整え、社会を豊かにし、企業の力を高め、未来への道しるべとなります。森と未来は、この知恵を現代に活かし、次の世代へつないでいくことを使命としています。
Special Thanks !!
今回のイベントは、森と未来を支えてくださる多くの方々のご支援によって実現することができました。応援金をご支援くださった皆さま、本当にありがとうございました。運営は、Shinrin-yoku Facilitator®︎(Area Coordinator)の皆さん、そして友人たちが、忙しい中で数ヶ月前から一緒に準備を進めてくれました。より良いイベントにしようと親身になって議論してくれる姿に、毎回胸が熱くなり、身の引き締まる思いでした。心から感謝しています。
当日は、会場に“森”をつくっていただきました。会場に足を踏み入れて驚いたのは、生の木が使われていたことです。来場者の皆さまには、それぞれの「森と未来宣言」を葉っぱに書いていただき、短冊のように吊るしてもらいました。ステージには、森の恵みをふんだんに使った素敵なお花が飾られ、登壇者の胸にはカンナで作ったカンナフラワーを添えていただきました。大きなステージでも、一人ではないと感じられるほど心強い空間でした。一般社団法人森を守るクリスマスリース協会の皆さん、花装飾家 カムパニュラマヤさん、本当にありがとうございます。そして参加者へお配りした記念品は、絵描の黒田 花菜子さんが描いてくださった、樹木と子どもの絵で手拭いを制作しお配りしました。黒田花菜子さん、グラフィックデザイナーのyamabicodesign 井上 茜さんありがとうございました。
懇親会では、大学の大先輩が経営されている 八百屋カフェ さんに、山間地域から直接仕入れた新鮮な食材を使った最高のフィンガーフードをご用意いただきました。そして、会社設立前からご縁のある サントリー さんからは、段さんが「ザ・プレミアム・モルツ」と、今話題のノンアルコールビール「ザ・ベゼルズ」をご提供くださり、サントリー 川島さんの乾杯挨拶と共に会場は大いに盛り上がりました。お心遣いに、心より感謝申し上げます。その他、司会を引き受けてくださった山好きの室照美さん(ジョイスタッフ)、撮影チーム、新木さん、出田さん、神田明神のスタッフの皆さん、照明・音響チームの皆さん、本当にありがとうございました。
最後に、この日まで変わらず支えてくれた大切な家族に、心から感謝を伝えたいと思います。
これからも森と未来は、"人と自然が調和する、健やかで豊かな未来”の実現に向けて歩んでいきます。

















