2nd International Conference on Forest Therapy_2025.8.9-11 | Vancouver, Canada

2025年8月9日〜11日にカナダ・バンクーバーで開催された、2nd International Conference on Forest Therapy(2nd ICFT)に参加してきました。
主催は、The University of British Columbia(UBC:ブリティッシュコロンビア大学)の森林学部にある、Multidisciplinary Institute of Nature Therapy(自然療法学際研究所)。UBCは森林分野をはじめ、環境分野ではトップレベルの大学です。

第1回目の開催は、コロナ禍でオンラインだったこともあり、初となる集合型のカンファレンスは盛大な盛り上がりを見せました!
UBC上げての国際カンファレンス。世界から300名もの参加者が集い、3日間渡りたくさんの研究発表が行われました。写真は主催のMINT(@ubc.mint)Instagramより拝借。

森と未来では、2023年から海外向けに森林浴のプログラムを開発し、地域と連携しながらインバウンドツアーや教育プログラムを提供してきました。
その経験から、日本人が大切にしてきた自然や森林との関わり、”森林浴”という日本発祥の人と森の関わりに、大きな価値を感じるようになりました。森林セラピーというと、森林を健康のために活用する、人間にとって森林はどのような良い効果があるのか、という視点に関心が集まりますが、わたしはセラピーを行う前提として、日本人が森林をどのような存在として捉えているのか、そしてどのように森と共に生きてきたのか、を海外の方へ伝えたいと考えていました。
そんな最中にお声がけを頂いた今回の登壇は、2025年森と未来設立10年の節目にとても意味のある機会となりました。

私は今回、Keynote speaker(基調講演者)という大役を仰せつかり、日本からバンクーバーへ向かいました。
2nd ICFTは、世界中から研究者、実践者、ガイド、医療関係者、教育関係者、森林学者等が集まり、大きく以下4つの主要テーマが取り上げられました。

Ⅰ. 森林セラピーに関する最新研究
・身体的・精神的な健康への影響に関する最新の知見
・自然がもたらす深い結びつきや癒しの役割の探求

Ⅱ. 公衆衛生システムへの森林セラピーの統合
・公衆衛生の枠組みに森林セラピーを組み込むための最良の実践例
・実践者の養成や既存プログラムから得られた教訓

Ⅲ. 森林セラピーの政策と実践
・実践や運営に関する実務的・財政的側面
・ビジネスモデル、ガイドの役割、認証基準

Ⅳ. 森林セラピーにおける新しい技術の活用
・自然がもたらす結びつきや癒しの役割の新たな探求
・従来の実践を補完しながら、より広い人々へのアクセスを可能にする方法

それぞれのテーマごとにkeynote+研究発表が5〜7件、2日間にわたり大学内で行われました。(前後には様々な体験プログラムも開催!)
わたしは、Ⅲ. 森林セラピーの政策と実践 のkeynoteとして、「人と森をつなぎ直す:森林浴と日本の自然観」というテーマで30分ほど英語で講演をさせていただきました。
内容は、日本の森林の現状、森林浴誕生の背景、日本人の自然観(神道・八百万の神・畏敬の念)、森と未来の挑戦(事業モデル)について。海外の方にどのように伝わるのかとても興味がありましたが、信仰という繊細なテーマだったので、正直どのような反応を記されるか不安もありました。

講演の中で、わたしは”Forest therapy”や”Forest bathing”ではなく、日本人が大切にしている”Shinrin-yoku”という言葉を使わせていただきたいと初めに伝えました。
そして、今ある日本の森は、先人たちが未来のために大切に植え、育ててくれた財産であり、また、日本人にとって森林は、ただ木がたくさん生えている場所というだけでなく、信仰の対象でもあること。森と未来は、ただ森を使うのではなく、その土地で森林と共に生きてきた地域住民、そして先祖から受け継いだ森林を、豊かな状態で未来へ残すために、森林浴に取り組んでいるという想いを伝えました。

森と未来の活動については、森林浴を企業研修に取り入れたり、Shinrin-yoku Facilitatorを育成し3方良し(4方、5方にも良し)の考えを大切に事業を展開していることにも触れました。


聞いていただいた聴衆者からは、

「自国が大切にしている言葉、そして精神をこのような場で世界に向けて丁寧に伝えたことは、尊敬に値する!」
「企業へアプローチをしている例は初めて聞いた。どうやってアプローチしているんだ??」
「3方良しの考え、素晴らしい!共感する!」
「森林をセラピーとしてだけでなく、企業が活用し、保全に繋げるというサステナブルな循環は本当に素晴らしい!研究させてほしい」
「森林浴を学びに行きたい」「森林浴の考えに共感する!」etc...

想像を超える、ポジティブな感想、そして新しい提案や連携のお声がけもいただきました。

今回、わたしの他に、2名のShinrin-yoku Facilitatorが一緒にカンファレンスに参加しました。
広島でインバウンドガイドをしている川口康太さんは、「森林浴と被爆樹木」というテーマでプレゼンをし、日本から世界に向けて”平和”について語り、大きな反響を得るとともに、記憶を残しました。本当にかっこよかったです!
そしてもう1名は長野県安曇野市で通訳案内士をしている小嶋住江さん。今回発表はしませんでしたが、語学力の乏しい私を常に支えてくださり、彼女がいなければ今回の大役を全うすることはできませんでした。Sumi、本当にありがとう。


また、今回お声がけいただいた背景には、2016年から交流を深め、森林浴の価値や互いの取り組みを共有し、双方に学び合いを続けてきた、ANFTの創設者AmosそしてJackieに推薦いただき叶ったステージでした。ANFTは世界70カ国に3,000人のForest therapy guideを育成しており、この分野では大きな存在です。バンクーバー滞在中は、大きな家を借り、ANFTのメンバーとShinrin-yoku Facilitatorが共に寝泊まりをし交流を深めました。Jackie、Amos貴重な機会を本当にありがとうございました。そして、今回素晴らしいカンファレンスを開催してくださった、UBCのDr.Wang、Mintの皆さん本当にありがとうございました。

参加者に日本人は私たち3人だけかと思ったら、なんと千葉から遥々カンファレンスに参加し、講演を聴きにきてくれた方がいました。土肥姉妹、心から感謝を申し上げます。この素晴らしい経験を共にできて嬉しかったです!

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Forest therapyは、世界で想像を超える広がりを見せています。
それは、リラクセーションやストレスケアの域を超え、高齢者医療、引きこもり、不登校、貧困、地球環境問題まで、あらゆる分野での研究が進み、世界で人々のWell-beingのためにどのように取り入れていこうか、という壮大なテーマとして議論が進められいます。

日本国内には、2008年に森林セラピー基地が誕生し、地方自治体が中心となり観光やストレスケアの分野で活動が進められていますが、世界がテーマとするForest therapyからは離れていっている印象も受けました。世界では、各国であらゆる研究が発表される今、これからは実践を重ね、政策に取り入れ、必要としている人々にきちんと届くサービスとして提供されることが求められています。
森林浴という素晴らしい文化が生まれた日本。私はこの価値を大切に、全国の地域の皆さんと連携を続けていきたいと思っています。

森と未来では、これから森林浴の魅力を存分に海外の方にも伝えるべく、「The Way of Shinrin-yoku」というプログラムを海外向けに販売していきます。
サービスは、全国で活動するShinrin-yoku Facilitatorが想いを込めてお届けします。

バンクーバーでは、もちろんたくさん森林にも行きました!
素晴らしすぎて書ききれないので、、そのお話はまた別の機会に・・・。